認知症は、軽い物忘れからはじまり、被害的な妄想、凶暴化、徘徊、異食、性的行動などに拡大していきます。その多くは、高齢からくる脳の機能の低下によって、感情をコントロールしたりすることが難しくなっているのだということです。
しかし、認知症患者は、ぼけたくないという気持ち、羞恥心やプライドは、しっかりと持っています。だからこそ、「自分は馬鹿にされているのではないか」、「こんなことさえ思い出せない自分が情けない」といった感情からパニックや問題行動につながります。
認知症ご高齢者と接するときは、自尊心を傷つけないことが大切です。つまり、否定したり、怒鳴ったり、無理に間違いを正そうとしないことです。
●「忘れる」という能力を利用する
問題のある状況を変えさせようとするのではなく、その状況を忘れさせるのです。例えば、食事をすませたばかりなのに「ごはんは、まだかい?」とたずねられたときは、今、料理をしていることにして、どんな食材を使っているかなどを説明します。そして、軽食(果物やお菓子など)に気を向けさせるのがよいと思います。
●「今」に目を向けさせる
妄想や狂暴化などは、意識が「今、ここ」から離れるから起こるとも言えます。怖い夢や過去の嫌な出来事と現実が入れ替わってしまい、パニックや暴れ始めたとき、患者のお気に入りのぬいぐるみや風船、輪投げなどの遊具に注意を向けさせるのです。なんの不安もない現実を認識すれば、落ち着くことができます。